ウメハラVSときどin獣道弐②～神に挑んだ世界王者～
前回までのあらすじ
かつてない盛り上がりを見せるe-sports。その隆盛を迎えるはるか前から第一人者として業界を牽引してきたウメハラ。
そして格ゲー最大規模の世界大会、Evolution 2017を制したときど。
日本格ゲー界を代表する両者がそのプライドをかけて2018年3月10日、獣道弐にて合間見えることとなった。
どちらが勝つのか。接戦になるのか。大差となるのか。
そんな喧々諤々が格ゲーファンの中でされる中で3月10日、獣道弐は当日を迎えた。
ルールは10試合先取り。通常の大会では3試合先取りであるため、より実力差が明確に露見するルールである。
僥倖による勝利は一切無く、負ければただ実力差が露になるだけ。
それほど過酷なこのルールでウメハラとときどは両者のプライドをかけてぶつかることとなった。
両者以外の対決2試合を終え、いよいよ始まるストリートファイターVの現最強を決める対決。
試合直前のインタビューにて意気込みをまずウメハラが述べる。
「まあこのカードありきで今日の日程を組んだくらいなので、当然やりこんできました。まあ、あのー(ときどは)強いです。」
彼らしい飄々とした受け答え。格ゲー界の神たる余裕が感じられる。
対するときど。受け答えは対照的だった。
「相手が強いのは重々わかっているんですけど、今回は俺の方が強いっていう自信があります」
後半の声は震えていた。
負ければ自分がこれまで積み上げてきたものを否定される恐怖。
格ゲーの歴史そのものと呼ばれる圧倒的存在に相対する重圧。
そういったものが言葉の端ににじみ出ていた。
そして、周囲の観客が固唾を呑んで見守る中、最も強い男を決める頂上対決が始まった。
ここで両者の使用キャラクターに関して簡単に説明をしたい。
ときどが使用するキャラクターは「豪鬼」。ストリートファイターV内でトップクラスの攻撃力を持つキャラクター。
しかし体力が他キャラよりも少ないため、相手に攻撃をさせない攻め続けるプレースタイルが求められる。
特徴として相手に対して後ろ側にレバーを入れないと必殺技が発動しないというものがあり、基本的には待ちの姿勢で相手の出方を伺うプレースタイルが求められる。
(このプレースタイルを称して”待ちガイル”という言葉もあるほどである)
この両キャラクターの性質から、攻め込むときど豪鬼に対してカウンターを狙うウメハラガイルという展開で試合が進むことが予想されていた。
そんな中、迎えた一本目。その予想は覆ることとなった。
ウメハラガイルが後ろ側にレバーを入れないという新戦法を見せたのである。
このイベントの解説者で、自身もトッププレーヤーであるふ〜どもこれには「30年の歴史の中で今まで見たことがない」とコメント。
本来下がるはずのガイルが見せた画面中央に仁王立ちするそのスタイルは大変な圧力があり、場を制圧したウメハラがあっという間に2本先取した。
しかし、ときども瞬時に先取された2本を取り返す。
この瞬間、一進一退の攻防が繰り広げられるかと思われた。
が、試合本数が増すにつれ、ウメハラガイルの圧力は増していく。
その差は段々と広がっていき、折り返しの計10試合の段階でウメハラが7本、ときどが3本となった。
しかし、歴戦の猛者であるときどは集中した表情を全く崩さない。当然だが、全く勝利を諦めてはいないようだった。(続く)
